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「遺言書を残しておきたいけれど、どの方法で作ればいいのか分からない」——遺言は、決められた方式を守らないと無効になるため、最初の選び方が大切です。結論から言うと、ふだん使われる遺言(普通の方式)は自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類です(民法967条)。手軽さを重視するなら自筆証書遺言を法務局に預ける方法、確実さを重視するなら公正証書遺言が中心になります。この記事では、遺言でできることと効力、3種類の違い、選び方、2026年の民法改正のポイントをまとめ、それぞれの詳しい解説記事へご案内します。
遺言書の効力|遺言でできること
遺言は、自分の財産を誰にどう引き継ぐかなどを、亡くなった後に実現するための意思表示です。遺言は遺言者が亡くなった時から効力を生じます(民法985条)。民法が定める主なことは次のとおりです。
- 相続分や分け方を決める:法定相続分と違う割合を定めることができる(民法902条)
- 相続人以外にも財産を渡す:お世話になった人や団体への遺贈ができる(民法964条)
- 遺言執行者を指定する:遺言の内容を実現する人を決めておける(民法1006条)
- 子を認知する:認知は遺言でもできる(民法781条)
一方で、遺言で何でも決められるわけではありません。法的な効力が生じる事項の範囲は遺言でできること・できないことで詳しく解説しています。
遺言書の3つの種類【比較表】
| 項目 | 自筆証書遺言(自宅保管) | 自筆証書遺言(法務局保管) | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|---|
| 作り方 | 本人が全文・日付・氏名を手書きし押印(財産目録はパソコン可) | 同左を様式どおりに作り、本人が法務局へ預ける | 本人が公証人に内容を伝え、公証人が作成 | 本人が作って封印し、公証人と証人の前で提出 |
| 証人 | 不要 | 不要 | 2人以上 | 2人以上 |
| 費用 | かからない | 保管申請 3,900円 | 財産額に応じた手数料 | 公証人の手数料 |
| 保管 | 自分で保管 | 法務局 | 公証人側で原本を保管 | 自分で保管 |
| 家庭裁判所の検認 | 必要 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 内容のチェック | なし | 形式のみ(内容の相談は不可) | 公証人が関与 | なし |
検認とは、遺言書の状態を確認して偽造・変造を防ぐ家庭裁判所の手続きで、遺言が有効か無効かを判断するものではありません(裁判所)。
自筆証書遺言|手軽さが強み、法務局保管で弱点を補う
遺言者が全文・日付・氏名を自分で書き、押印する方式です(民法968条)。財産目録はパソコンで作ったり通帳のコピーを付けたりできますが、目録の各ページに署名と押印が必要です。書き間違えたときの訂正にも決まった方法があり、守らないと訂正の効力が生じません。具体的な書き方と文例は自筆証書遺言の書き方で解説しています。
自宅で保管すると、紛失や、見つけた人による破棄・改ざん、そもそも見つけてもらえないおそれがあります。法務局の自筆証書遺言書保管制度を使えば、手数料3,900円で原本を預けられ、相続開始後の検認も不要になります。希望すれば、亡くなったことを法務局が確認した際に、あらかじめ指定した人(3名まで)へ遺言書が保管されていることを通知してもらうこともできます。手続きの流れは自筆証書遺言書保管制度をご覧ください。
公正証書遺言|確実さを重視する人向け
証人2人以上の立会いのもと、遺言者が内容を公証人に伝え、公証人が作成する方式です(民法969条)。公証人が遺言の内容を整理し、方式の不備で無効になるおそれがないことが大きな利点です。日本公証人連合会によると、令和7年の電子化により、原本は電磁的記録で作成され、遺言者と証人は電子サインをします。手書きが難しい人も作成でき、病院や自宅への公証人の出張や、条件を満たせばウェブ会議での作成も可能です。平成元年以降に作られた公正証書遺言は、相続開始後に相続人などが全国の公証役場で有無を検索できます。
費用は公証人手数料令で決まっており、遺言で財産を受け取る人ごとに財産の価額に応じた手数料を合計し、全体の財産が1億円以下なら「遺言加算」1万3,000円が加わります。たとえば配偶者に3,000万円、子に2,000万円を渡す内容なら、手数料表では2万6,000円+2万6,000円+1万3,000円=6万5,000円が目安で、ほかに正本・謄本の交付手数料などがかかります。推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族などは証人になれません(民法974条)。作り方と手数料の詳細は公正証書遺言とはで解説しています。
秘密証書遺言|内容を秘密にしたい場合の方式
遺言者が署名・押印した遺言書を封じて同じ印で封印し、公証人1人と証人2人以上の前で自分の遺言書であることなどを申し述べる方式です(民法970条)。本文はパソコンで作っても代筆でもかまいません。ただし、公証人は内容を確認しないため内容の不備で無効になるおそれがあり、保管は自分で行い、法務局の保管制度は使えず、検認も必要です。詳しくは秘密証書遺言とはをご覧ください。
自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶ?
| こんな場合 | 向いている方式 |
|---|---|
| 費用をかけず、まず自分で書いておきたい。内容がシンプル | 自筆証書遺言(法務局保管を利用) |
| 財産の種類が多い、不動産が複数ある、内容が複雑 | 公正証書遺言 |
| 相続人の間で争いが心配。遺言の有効性を疑われたくない | 公正証書遺言 |
| 病気などで手書きが難しい、外出が難しい | 公正証書遺言(出張・ウェブ会議の相談) |
| 家族に早く確実に見つけてほしい | 法務局保管(指定者通知)または公正証書遺言 |
日本公証人連合会は、保管制度を使っても自筆証書遺言は全文の手書きが必要で、法務局は内容の相談に応じないことを、公正証書遺言との違いとして挙げています。迷ったときは、公証役場の無料相談や専門家に、内容と方式をあわせて相談すると安心です。
2026年の民法改正で何が変わる?
令和8年6月24日に「民法等の一部を改正する法律」が公布され、遺言制度も見直されました。法務省の資料によると、主な内容は次のとおりです。
| 改正の内容 | 施行の時期(法務省の案内) |
|---|---|
| 自筆証書遺言・秘密証書遺言などの押印を任意に(訂正時の押印も含む) | 公布から1年以内の政令で定める日 |
| 受遺者の従業員など(法人なら役員も)を証人の欠格事由に追加 | 同上 |
| 死亡の危急に迫った人などの特別の方式に、録音・録画を使う方式を追加 | 同上 |
| パソコンで作った遺言を法務局に預け、本人確認と全文の口述を経て保管する「保管証書遺言」の創設 | 公布から3年以内の政令で定める日 |
遺言を書く前・書いた後に確認したいこと
- 遺留分:兄弟姉妹以外の相続人には、遺言でも奪えない最低限の取り分(遺留分)がある(民法1042条)。配慮を欠くと請求を受けることがある(遺留分侵害額請求の期限と方法)
- 書き換え:遺言はいつでも方式に従って撤回でき、前の遺言と矛盾する部分は後の遺言が優先する(民法1022条・1023条。遺言書の書き換え・撤回)
- 予備の定め:財産を渡す相手が先に亡くなった場合に備え、予備的な定めを入れておく方法がある(夫婦で遺言を残す・予備的遺言)
相続が始まったら|遺言書の探し方と検認
自宅で保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言は、保管者や見つけた相続人が、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求します(民法1004条)。費用は遺言書1通につき収入印紙800円です。封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封すると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。公正証書遺言と、法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要です。遺言書があるか分からないときの調べ方は遺言書があるか分からないとき、検認の流れは遺言書の検認とはで解説しています。
よくある質問
録音やビデオで残した「遺言」は有効ですか?
現行の普通の方式では、録音や録画は遺言として法律上の効力がありません。2026年の改正で、死亡の危急に迫った場合などの特別の方式に限って、録音・録画を使う方式が追加される予定です。
夫婦で1通の遺言書を作れますか?
作れません。民法975条は、2人以上が同じ書面で遺言することを禁じています。夫婦それぞれが自分の遺言書を作ります。
エンディングノートに書いた希望には効力がありますか?
エンディングノートは遺言の方式を満たさないため、財産の分け方などに法的な効力はありません。家族への希望やメッセージを伝える手段として、遺言書と使い分けるのが一般的です。
遺言書があれば、遺産分割の話し合いは不要ですか?
遺言ですべての財産の行き先が決まっていれば、原則として遺言どおりに手続きできます。遺言に書かれていない財産は話し合いが必要です。
まとめ:方式の違いを知り、自分に合う形で残す
遺言書の普通の方式は、自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類で、どれも方式を守らなければ無効になります。手軽さなら法務局保管を使った自筆証書遺言、確実さなら公正証書遺言が中心です。遺言は亡くなった時から効力を生じ、相続分の指定や遺贈、遺言執行者の指定などができますが、遺留分には配慮が必要です。2026年の改正で押印の任意化や保管証書遺言の創設が予定されているため、作成時は最新のルールを確認しましょう。迷ったら、公証役場や専門家に相談しながら進めてください。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関・日本公証人連合会の公表情報をもとにした一般的な解説です。遺言の有効性や内容の判断は個別の事情で異なります。具体的な作成は公証役場・法務局・専門家にご確認ください。改正法の施行日は法務省の案内でご確認ください。
e-Gov法令検索「民法」第781条・第902条・第961条・第964条・第967条〜第970条・第974条〜第976条・第985条・第1004条〜第1006条・第1022条・第1023条・第1042条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
法務省「自筆証書遺言書保管制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html
法務省「09 手数料」(自筆証書遺言書保管制度)https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html
法務省「10 通知」(自筆証書遺言書保管制度)https://www.moj.go.jp/MINJI/10.html
法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
法務省「民法等改正法の概要」https://www.moj.go.jp/content/001465481.pdf
日本公証人連合会「2 遺言」https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
裁判所「遺言書の検認」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html






