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親が亡くなったとき、あるいは親の将来を考え始めたとき、「相続」という言葉の重さに身構えてしまう方は多いはずです。でも、相続の全体像は意外とシンプルです。結論から言うと、相続とは亡くなった方の財産や権利・義務を、法律で決まった家族(相続人)が引き継ぐことです。押さえるべきは、①誰が相続人か ②何を引き継ぐか ③引き継ぐか放棄するか ④どう分けるか ⑤いつまでに何をするかの5つです。この記事では、この5つと相続税の基本を順に整理し、それぞれを詳しく解説した記事への入口をまとめます。最初に読む1本として活用してください。
相続とは:亡くなった時から自動的に始まる
相続は、人が亡くなったことによって開始します(民法882条)。亡くなった方を被相続人、財産を引き継ぐ人を相続人と呼びます。相続人は、相続が始まった時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を引き継ぎます(民法896条)。届出や手続きをしなくても、亡くなった瞬間に権利義務は相続人に移っている、というのが法律上の考え方です。
手続きが必要なのは、引き継いだ財産の名義を変えたり、相続人の間で分け方を決めたり、税金を申告したりするためです。なお、遺言によって相続人以外の人に財産を渡すことは「遺贈」といい、相続とは区別されます。
誰が相続する?相続人の範囲と順位
相続人になる人は民法で決まっています。配偶者は常に相続人になり、そのほかの親族は次の順位で、先の順位の人がいない場合に相続人になります。
| 順位 | 相続人 | 配偶者と一緒に相続するときの法定相続分 |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子(亡くなっていれば孫) | 配偶者2分の1・子2分の1 |
| 第2順位 | 父母など直系尊属(近い世代が優先) | 配偶者3分の2・直系尊属3分の1 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹(亡くなっていればおい・めい) | 配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1 |
同じ順位の人が複数いるときは、その割合を均等に分けます。子や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合に、その子が代わりに相続人になるしくみを代襲相続といいます(代襲相続とは)。相続人の範囲は法定相続人とは、パターン別の割合は法定相続分の早見表で詳しく確認できます。
何を引き継ぐ?プラスもマイナスも
相続で引き継ぐのは、預貯金・不動産・株式などのプラスの財産だけではありません。借金・未払金・保証債務などのマイナスの財産も引き継ぎます。一方、お墓や仏壇などの祭祀財産は、遺産分割とは別に、祭祀を主宰する人が引き継ぎます(民法897条)。また、受取人が指定された死亡保険金や遺族年金は、遺産分割の対象とは別に扱われます。財産の種類と見落としやすいものは相続財産の種類で一覧にしています。
引き継ぐか放棄するか:3つの選択肢
| 選択肢 | 内容 | 手続き |
|---|---|---|
| 単純承認 | プラスもマイナスもすべて引き継ぐ | 不要(期限内に何もしなければこれになる) |
| 相続放棄 | プラスもマイナスも引き継がず、初めから相続人でなかったことになる | 家庭裁判所に申述 |
| 限定承認 | プラスの財産の範囲内でマイナスを引き継ぐ | 相続人全員で家庭裁判所に申述 |
相続放棄と限定承認の期限は、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内です(民法915条)。財産の調査が間に合わないときは、家庭裁判所に期間の延長を申し立てられます。
どう分ける?遺言と遺産分割
遺言書がある場合
遺言書があれば、原則としてその内容に沿って財産を分けます。自宅などで保管されていた自筆の遺言書は、開封せずに家庭裁判所で検認を受けます(民法1004条)。公正証書遺言と、法務局の保管制度で預けられていた自筆証書遺言は、検認が不要です(遺言書の検認とは)。なお、配偶者や子などには、遺言でも奪えない最低限の取り分(遺留分)が認められています。
遺言書がない場合
相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、誰が何を受け継ぐかを決めます。法定相続分は目安で、全員が合意すれば違う割合で分けることもできます。合意できたら遺産分割協議書を作り、預金や不動産の手続きに使います(遺産分割協議の進め方)。話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停・審判を利用できます。
いつまでに何をする?主な期限の一覧
| 手続き | 期限(数え始め) | 窓口 |
|---|---|---|
| 死亡届 | 死亡の事実を知った日から7日以内 | 市区町村役場 |
| 年金受給権者死亡届 | 厚生年金10日以内・国民年金14日以内(マイナンバー収録者は原則省略可) | 年金事務所 |
| 相続放棄・限定承認 | 相続の開始を知った時から3か月以内 | 家庭裁判所 |
| 準確定申告 | 相続の開始を知った日の翌日から4か月以内 | 税務署 |
| 相続税の申告・納税 | 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内 | 税務署 |
| 相続登記 | 不動産の取得を知った日から3年以内 | 法務局 |
期限は手続きごとに数え始める日が違い、必ずしも亡くなった日ではありません。相続登記は2024年4月から義務になり、正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料の対象になります。2024年4月より前の相続で登記していない不動産は、原則2027年3月31日までに申請が必要です。期限の早い順の一覧と窓口は死亡後の手続き一覧にまとめています。
相続税はかかる?基礎控除の目安
相続税は、遺産の合計(みなし相続財産などを含め、債務や葬式費用を差し引いた額)が基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合にかかります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
遺産がこれ以下なら、原則として相続税の申告は不要です。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、申告が必要です。数え方の注意点は相続税の基礎控除とはで解説しています。
まず何から始める?最初の6ステップ
- 死亡届と、年金・健康保険などの届出を済ませる
- 遺言書があるかを確認する(自宅、公証役場、法務局)
- 戸籍を集めて相続人を確定する
- 財産と借金を洗い出し、一覧にする
- 3か月以内に、引き継ぐか放棄するかを判断する
- 遺産分割・名義変更・申告を、期限から逆算して進める
どこから手を付けるか迷ったら、専門家への相談も選択肢です。不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人の間で争いがあるときは弁護士がそれぞれの専門です(相続の専門家の選び方)。
よくある質問
Q. 内縁の妻や、息子の妻は相続人になりますか?
民法上の相続人になる配偶者は、婚姻届を出した配偶者です。息子の妻のように血縁のない親族も相続人にはなりません。財産を残したい場合は、遺言による遺贈などの方法があります。
Q. 相続人が1人もいないとどうなりますか?
家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が財産を整理し、特別縁故者への分与などを経て、残った財産は最終的に国のものになります。
Q. 相続の手続きに期限のないものもありますか?
遺産分割協議そのものには期限がありません。ただし、相続税の申告や相続登記には期限があり、時間がたつと相続人が亡くなって関係が複雑になることもあるため、早めに進めるのが安心です。
Q. 生前にできる準備はありますか?
財産と借入れの一覧づくり、遺言書の作成、家族での話し合いが代表的です。元気なうちに情報を整理しておくと、残された家族の負担は大きく減ります。
まとめ
相続とは、亡くなった方の財産と権利義務を、法律で決まった相続人が引き継ぐことです。配偶者は常に相続人で、子・父母・兄弟姉妹の順に相続人になります。引き継ぐのはプラスとマイナスの両方で、借金が多ければ3か月以内に相続放棄を検討します。分け方は遺言があればそれに沿い、なければ相続人全員で協議します。期限は手続きごとに違うため、一覧で確認しながら、この記事のリンク先で一つずつ理解を深めていきましょう。
※本記事は2026年10月時点の法令と公的機関の公表情報にもとづく一般的な解説です。相続人や相続分、税金の有無は個別の事情で異なります。具体的な判断は、家庭裁判所・法務局・税務署などの窓口や、司法書士・税理士・弁護士などの専門家にご確認ください。
e-Gov法令検索「民法」(882条・887条・889条・890条・896条・897条・900条・915条・921条・923条・952条・958条の2・959条・1004条)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
国税庁「No.4152 相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm
国税庁「No.4205 相続税の申告と納税」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4205.htm
国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2022.htm
法務省「相続登記の申請義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html
熊本地方法務局「自筆証書遺言書保管制度について」https://houmukyoku.moj.go.jp/kumamoto/page000001_00331.html
e-Gov法令検索「戸籍法」(86条)https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000224
日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html






